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ぼくは痔ろうで、人生最初の入院をしました。
三階建てのその病院は、それほど大きな建物ではありませんでした。
一階で外来などの診察を行っており、
二階と三階に、それぞれ病室が10部屋ほど並んでいるだけでした。
ぼくは、その二階の一室で、お尻の病の回復を待っていたのでした。
最初は、ともかくも痛くて駆け込んだ病院でしたが、
中の膿を出した途端に痛みがなくなり,そのまま手術へ。
切り取ったお尻の肉が、再び盛り上がってくるまで入院となりました。
最初は三週間の予定だったのが、
すでに一ヶ月が過ぎても、まだ退院とはなりませんでした。
廊下へ出ては長椅子に座って、
やはり入院中の人たちと無駄話に花を咲かせておりました。
お互いに退屈を持て余している者同士、
すぐに打ち解け、身の上話が始まりました。
ぼくのような会社員がいるかと思うと、
自営のおじさんなど、職業もさまざまでした。
左官工の職人さんは、ぼくと同じ年でした。
いろいろと話を進めていくと、なんと彼も痔ろうとのこと。
“お尻の病でオシリ会い”なんてダジャレを飛ばしたのは、彼の方でした。
この病気のことが、やれ恥ずかしいだの、
みっともないだのと思っていたぼく。
そんな狭量なぼくなどとは違って、かえってその病気を笑ってしまう、
彼の器の大きさに感心させられました。
そんな彼が、ある時、ぼくの病室に来て、
“ちょっと、相談したことがあって・・”と言うのでした。
じゃあ、ということで、例の廊下の長椅子に二人で座って、
彼の話を聞くと、なんと彼は、
この病院の窓口にいつも座っている女性に恋をしてしまったそうなのでした。
そこは、まだ20代前半の男が二人です。
キレイな女性がいたら、そんな想いを抱いても当然です。
「オレ、退院したら、彼女に花束でも贈ろうと思っている。お前は、どう思う?”」
と、彼が言います。
「良いんじゃないか。頑張れよ」
「お前、今度、彼女のこと見てくれないか」
「オレがか、何で・・」
要するに、彼が受付の彼女に花束を渡した時、
彼女が受け取ってくれそうかどうか、偵察しろということなのでした。
ぼくは、少々、迷惑な感じがしましたが、
一方では興味も湧いてきて、後から後悔するのも分からずに、
ついつい、“わかった”と、約束してしまいました。
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